坊主割引

アジアの多くの寺では、お坊さんは寺院の拝観料を払わなくて良いのが普通だ。タイなどの上座部仏教国で上座部僧が境内に入るのにお金を取られないのは当然として、私がタイでの得度前に、日本のお坊さん姿で寺院を参拝した時も、拝観料は取られなかった(ただし、タイを含むテーラワーダ仏教国における大乗仏教僧侶の扱いに関しては、状況によって様々な場合があるので念のため)。

ネパールのパタンにあるヒランニャ・ヴァルナ・ヴィハール(ゴールデン・テンプル)には受付の看板に「monk free」の文字があったと記憶する。

インドでも仏教寺院ではどの国の僧侶からも拝観料を取らない建前だが、ブッダガヤの大塔(マハボディ・テンプル)では、例え僧侶であっても旅行者が相手だと拝観料を徴収しようとする職員が多いのが、インドらしくて微笑ましい。

ちなみに日本で拝観料を取っている寺院でも僧侶の場合は大抵無料だが、この坊割制度、日本仏教界共通のルールがあるわけではないので、寺によっては拝観料を納めねばならない時もある。寺に参る以上はお供養をして当然だし、寺院の維持費としてなにがしかの金額を納めるのは一向に構わないが、サンガ(仏教教団)というものが宗派や国を超えて共通だとすれば、やはり世界中の僧侶が自由に各国の仏教寺院に出入りできることが、望ましいのではなかろうか。


拝観料無料という言葉について

もちろん無料とか割引という言葉は適当でなく、あくまでも寺院境内への僧侶の立ち入りを制限しないという意味で使わせて頂いている言葉だ。ちなみに主な仏教国では僧侶の境内への参拝が自由なだけでなく、寺院に自由に泊めてもらえる場合が多いのだが、これもあくまで行脚修行中の僧侶を止宿させてくれるわけだから、特に日本の僧侶などは僧としての振る舞いに十分な注意が必要だ。ちなみに日本のお寺で外国人を含む僧侶を無条件に泊めてくれる所は、まだまだ圧倒的に少数だと思う。

インドの坊割

以前には僧侶のインドビザは無料だったらしい。04~05年版までの「地球の歩き方 インド」には、そのことが書いてあったが、日本のインド大使館に問い合わせたところ、いつ、なぜ、この制度が始まり、何年に廃止になったかは一切不明だとのこと。

従ってこの制度が、仏教関係者による仏蹟巡拝ツアーがインド旅行者の主流だった頃のサービスの名残だったのか、インドにおける出家者に対する敬意の伝統に基づく坊主割引なのかは、確認できなかった。