アジアの経本

ブッダの死後、弟子たちはブッダの教えを記憶によって整理し暗誦して伝えたが、文字による経典が作られたのは、それから何百年も後のことだ。

やがてインドでは椰子の葉を加工した貝葉(ばいよう)経典が現れ、また中国では木版印刷による紙の経本も製本されるようになった。

中国の折本(おりほん)は日本にも伝わったが、日本では和綴(わとじ)による独自の形の経本も出来た。

近代にはいわゆる洋本型式の経本も作られ、さらに現在ではインターネットの普及により、「経本」という形に限ることなく、地球上の至るところにブッダの教えは広まることとなった。 

折本(おりほん)

綴本(とじほん)


アジアの開経偈

開経偈の意味と出典

日本


台湾


韓国



無上甚深微妙法 百千萬劫難遭遇

我今見聞得受持 願解如来眞實義 (めったに出会えぬブッダの教えに出会えた今となっては、何としてでもその真理を理解して体得したいと願う)

 

お経を読む前に唱えられる開経偈(かいきょうげ)は、日本のほぼ全ての宗派で使われている。

台湾や韓国でも使われているが、韓国では字句が日本で知られているものとは、一部違っている。

開経偈は作者未詳とされているが、原始仏典のダンマパダ182に「人間の身を受けることは難しい。死すべき人々に寿命があるのも難しい。正しい教えを聞くのも難しい。もろもろのみ仏の出現したもうことも難しい※」とあるように、余程の条件がそろわなければブッダの教えには巡りあえないという考えは、インド以来のものだろうと思う。

法華経には「諸佛甚解値 億劫時一遇」(序品)、「甚深微妙法 我今已具得」(方便品)、「言此経深妙 千万劫難遇」(随喜功徳品)などとあるが、開経偈はこうした字句を基に中国で作成され、韓国や日本に伝わったのかも知れない。

仏法僧に対する三帰依文(さんきえもん)と共に漢訳仏教国で読経の際に唱えられるという点において、開経偈は、同じく三帰依文と共に常用されるテーラワーダ仏教におけるブッダ讃嘆句「ナモ タッサ バガワト アラハト サンマサンブッダッサ」に匹敵する偈文であると言えようか。

 

※『ブッダの真理のことば 感興のことば』(岩波文庫) より

インド・カルカッタ(現コルカタ) マハーボディソサエティ発行

英訳対照 ダンマパダ

タイ・タマユット派の英訳対照パーリ語経典