アジアの東司(とうす)…お寺のトイレ

お寺のトイレを東司(とうす)と呼ぶのは禅宗だけで、他の宗派では使わないようだが、単なるトイレについての考察ではなく、あくまで「お寺のトイレ」に特化する意味で、「東司」という用語を使わせて頂くことにした。

日本のお寺のトイレ

京都の臨済宗本山・東福寺の百雪隠。僧堂で修行する多数の雲水さんたちが使用した室町時代の東司。

静岡の曹洞宗・可睡斎のトイレ。昭和12年に建てられたものではあるが、伝統的な味わいも残し、なおかつ広大なことで有名な東司。

禅宗の本山には禅宗的七堂伽藍の一部としての東司以外に、現代的でごく普通の公衆トイレを併設している所が多いが、それらの注意書きにはどんなものがあるかも調べてみた。 
ちなみに臨済宗本山・相国寺の公衆トイレには、既製品らしき「お互い清潔に使用しましょう」と書いたプラスチック板が貼られていた。
深い意味はないのかも知れないけれど、禅宗寺院だけに、シンプルにして仏教的であるような気がして来る。
  
また、日本の各宗派のトイレの男女の区別の表示には、「善男子」「善女子」と書いてある所がたまにある。
曹洞宗大本山・永平寺の東司の貼り紙
曹洞宗大本山・永平寺の東司の貼り紙
宇治の興聖寺(曹洞宗)の東司の貼り紙に書かれていた偈文
宇治の興聖寺(曹洞宗)の東司の貼り紙に書かれていた偈文
百雪隠がある東福寺の、別の場所にある現代式トイレの貼り紙。
百雪隠がある東福寺の、別の場所にある現代式トイレの貼り紙。
臨済宗本山・妙心寺のトイレ
臨済宗本山・妙心寺のトイレ
臨済宗本山の大徳寺の駐車場付近の新しいトイレには、トイレ使用に関する貼り紙や注意書きはなく(不審者立ち入りに関する注意書きはあった)、厠所の御本尊である烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)の木札がお祀りしてあった。
臨済宗本山の大徳寺の駐車場付近の新しいトイレには、トイレ使用に関する貼り紙や注意書きはなく(不審者立ち入りに関する注意書きはあった)、厠所の御本尊である烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)の木札がお祀りしてあった。

海外寺院のトイレ

タイのお寺のトイレには、水浴び(アップ・ナム)ができる個室の付属している所が多い。
また、元々タイのトイレは水浴び用の水槽とセットになった形式が伝統的なので、古いトイレがそのまま残っているお寺も多い。
タイ・ピサヌロークのワット・ラチャブラナ。野外にシャワー室付きトイレ、室内に昔ながらの水浴び用水槽のあるトイレの両方がある。
タイ・ピサヌロークのワット・ラチャブラナ。野外にシャワー室付きトイレ、室内に昔ながらの水浴び用水槽のあるトイレの両方がある。
台湾でも法鼓山桃園別院の斎明寺は非常に近代的で美しい僧坊や居士寮があり、トイレにシャワー室が併設されていた。    
台湾でも法鼓山桃園別院の斎明寺は非常に近代的で美しい僧坊や居士寮があり、トイレにシャワー室が併設されていた。    
 台湾苗栗県の九華山には多数の参拝者が利用できる巨大なトイレがある。
台湾苗栗県の九華山には多数の参拝者が利用できる巨大なトイレがある。

おまけ

・テーラワーダ仏教における、用を足す時の戒律には、立ったまま用を足してはならないとある。

インドでは野外で男性が用を足す場合、大小に関わらず、今でもしゃがんでいるので、本来のインドの用便作法が、仏教に取り入れられたのかと思う。

 

・中国由来の日本の天台宗や禅宗におけるトイレに入る際の作法は、天台と禅で少し作法が違うが、どちらも指を弾く「弾指(たんじ)」を行う点は共通している。

 

・日本の、お寺ではない一般施設のトイレで見た注意書き。

「スタッフも利用させて頂きます」

「きれいにご使用頂き、有難うございます」(まだきれいに使用したかどうか分からない段階で、過去形にされると、きれいに使用せねばならない気になる)

「万一、汚してしまった場合はスタッフにお申し付けください」(暗黙の脅しかと)

「これ以上汚すと使用できなくなります」(余りお上品でない町のお手洗いで見た貼り紙)